雪が積もらない…

大雪山系を境に雪が降らないこと4シーズン目。朝晩は冷えるものの、日中は春のような雰囲気と景色が広がる12月初旬の北海道斜里郡清里町。

 

今年はわが店「Mandir(マンディル)」の開業もあって、なかなかトレーニングもできず、友人や知人たちのチャレンジングな情報を耳にしてはウズウズしていたが、やっぱり自分も小さくてもよいから「冒険がしたい」…そんな思いに駆られていた。そこでお店を起点にした西別岳・摩周湖を回るチャレンジを計画。

ホームマウンテンである斜里岳はすでに積雪があり、かつ登山道へ続く林道はすでに閉鎖されている。

しかし、ひがし北海道に位置するわが店の近くには湖と火山が織りなす阿寒摩周国立公園があり、標高がさほど高くなくともカルデラの淵から見える絶景の数々が広がる西別岳・摩周岳という縦走可能な登山道、清里峠・野上峠という2つの峠越え、昨年新たに誕生した「摩周屈斜路トレイル」の一部もコースに入れることができる。さらにそれをピストンではなくラウンドできる…これだ!身近にバリエーション豊かなコースが無数にあることは幸せの一言でしかない。

とはいえ、総距離が50マイル(80km) を超えること、15:30を過ぎると暗くなり始めること、人が走っていない場所にいると普通なら不審者扱いされる可能性もあることから、出発は朝の3時とした。

 

当日の予想気温は出発時0℃。ただ日中は7℃近くまで上がり、北海道民にとってこの季節のお天道様が出ての7℃は “あったかい”。寒がりの体質なので非常に悩ましいが、できるだけ脱ぎ着しない装備を準備した。天気は晴れ予報だが、冷え防止のためにダウンジャケットも忍ばせた。そしてスタートから47km先まで補給をできるところがないため、気温が低くても水分はしっかり装備しパッキング。

また、この時期の山道は霜が立って融けると泥濘なコンディションとなる可能性が高いため、今回のシューズはMERRELL(メレル)の「MOAB SPEED GORE-TEX®(モアブスピード ゴアテックス®)」をチョイス。ゴアテックス®を搭載しているので防水性・防風性を持ち、堅牢性がありながらもトレイルランニングができるマルチモデル。距離もあるのでクッション性・軽量性のあるシューズを準備した。

 

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12月初旬、チャレンジ当日午前3時。
気温は1℃とそんなに寒くないじゃんと思いながらスタート。

このルートで行くと町内で通るトレイルは1か所。夏にはサクラマスが遡上し、飛び跳ねながら滝越えする光景が有名な「さくらの滝」からの林道。当然明かりもないのでただただ暗闇の中だが、満天の星空は気分を高揚させた。

林道を抜け舗装路に戻ると、最初の峠越え「清里峠」へ向かっていく。途中に「神の子池」「裏摩周展望台」など寄りたい場所があるが、通過時は早朝でまだ闇の中。またのお楽しみにしておき、標高を上げるにつれてヒゲが凍っていく寒さを楽しみながら、行程を進めていく。

ここまで31km。ようやく登山道へ向かう林道へ。長いトレイルの始まりだ。この時午前7時前で、温かい陽光が射しはじめ、朝の光は山を照らし、疲れを忘れさせてくれるのが恐ろしいところだ。

西別岳登山口へ到着し、さすがに疲労もあることから大休憩。背負っていた水分をソフトフラスクに入れ替えるなど心身とギアを整理しながら休みをとる。

西別岳は標高799mと小ぶりな山であるものの、摩周湖の外輪を辿っていく摩周岳の登山道と連結しており、序盤に「がまん坂」という直登を超えればきれいな稜線上を進んでいく。

摩周湖は根釧台地を見渡せて海までの展望が開けるほか、斜里岳や雄阿寒岳・雌阿寒岳まで遠望でき、手軽ながらも楽しめる山だ。地元近隣でトレイルランニングをたしなむ者にとって格好の遊び場所となっている。

 

すっかり陽が上がり気温が上昇していくも朝が早いため、まだ泥濘なコンディションまでにはならない中で足を進められ西別岳山頂へ。順調順調。 

ここから縦走路を辿って摩周岳(カムイヌプリ)に向かうのだが、下りの部分が日陰となり氷面となっていたため、3度ほどスリップ。前傾姿勢をとっていたつもりが尻もちを着いたため、改めて自分のフォームを意識する良いきっかけとなった。下りの凍結面で当地におけるこの時期の登山コンディションの難しさを再認識し、次回同じようなタイミングで訪れるときは軽アイゼンもしくはチェーンスパイクを忍ばせて行くことを決意。

摩周岳はほぼ稜線をいくものの頂上手前約400mは日陰で急傾斜であることからやむなく今回は断念。山は逃げないので、装備やコンディションは整っている時にチャレンジできる。これまで多く登頂しているからもあるが、悔いはない。

 

そしてフルマラソンの距離を超えた約47km地点で最初のエイドとなる「摩周湖第一展望台」へ到着。

消化と腹持ちのバランスが良さそうな芋餅とのむヨーグルトで一服しながら水分確保やストレッチなどで身体を整え、後半戦の突入だ。

この展望台は、昨年開設された44kmのロングトレイル「摩周屈斜路トレイル」のスタート地点となっており、一部舗装路を通るものの、のんびり歩いても走っても情緒豊かな風景が流れていく。摩周湖から下っていく最初の林道は、これも昨年惜しまれつつ閉鎖された「北根室ランチウェイ」の第6ステージと呼ばれるパートであった箇所。さらにその昔は地元弟子屈町立美留和小学校の登山遠足に利用されていたそうだ。

現在も良いコンディションで通らせてもらえる管理団体に感謝するとともに、いつか北根室ランチウェイが復活して“ひとつなぎのトレイル”になると、どれだけ夢が広がるだろうと妄想を抱きながら歩を進めた。

舗装と林道両方入り混じり、さすがに60km近くの距離となると足にも違和感が出てくるが、補給もしっかりしながら景色を楽しんで乗り切り、第2エイドとなる「JR川湯温泉駅」へ到着。

…がしかし、火曜日であった今日はお店がすべて休業日。やっていれば温かいスープでもと楽しみにしていたが、気持ちを切り替え小休憩。駅横には足湯もあり純粋に素敵なところだが、スイッチが切れてしまうので今回は入らなかった。

残り26km。最後の峠である野上峠を超えて集落へとつながる林道を抜けるとゴールはもう間もなく。節々に痛みはあるものの、着々とゴールが近づいていることに満足感が押し寄せてくる。

 

この野上峠の頂上がちょうど阿寒摩周国立公園の境界線となっており、振り返ると噴火口と硫黄の結晶が輝く硫黄山(アトサヌプリ)、かぶと山(マクワンチサップ)、帽子山(サワンチサップ)を見下ろすことができる。さすが国立公園だけにポテンシャルやルートは豊富すぎるくらいあるので、またここでも新しいルート取りを勝手に考えてしまう。楽しみは新しく生み出される一方だ。

やっと地元に戻ってきた…。

最後は車や自転車でよく通過している見慣れた場所であることや、なかなかトレーニングできていなかったことも影響して、休んでは走るの繰り返しとなってしまった。次回の旅ランへの反省をしつつ、無事わが店にゴール。約14時間半の旅を無事に終えることができた。

 

マンディル - 西別岳/摩周湖ラウンドトレイル

距離:89.6km(トレイル率:37.5% / 33.6km
累積標高:2,780mD
タイム:14時間38

さすがに1月に入るとそれなりに雪が降るだろうが、今回の旅ランで味をしめたため欲求が止まらないのは良いことか悪いことなのか。

また次はどこへ行こう…。想像は冬に入っても止まることはなさそうだ。

マンディル 嶋田 武志

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最後に…使用したメレルシューズのインプレッション。

舗装、林道、登山道と路面のバラエティーに富んだコースであり、固い地面からの衝撃、石を踏みつけたときの突き上げ、岩や枝への激突などがあったが、前述した通り堅牢性、クッション性、軽量性が両立されたメレルの「MOAB SPEED GORE-TEX®(モアブスピード ゴアテックス®)」によって足のトラブルはなかった。今回の旅の3日後には激しい重労働をしても問題ない体調だったのは、足からの疲労が最低限で済んだところが大きいのではないだろうか。

【使用モデル】

▶MOAB SPEED GORE-TEX®[MERRELL]
18,480tax included)/ハイキング・トレイルランニング・マルチアウトドア
メンズはこちら
ウィメンズはこちら

  

 

【プロフィール】


マンディル代表店主 嶋田 武志

何を思ったかコロナウイルス全盛の時期に起業を企てた北海道長万部町出身の男。実家のある札幌市から妻の故郷である知床は斜里町の隣町、清里町に移住。山子(木こり)として生計を立てトレイルランニング、ロードバイク、クロスカントリースキーをたしなみながら日々を過ごし、遊び惚けていた名もなき一般人。自分の山遊びにとどまらず、多くの人にこの地の楽しさを享受しようとアウトドアショップ&宿「Mandir(マンディル)」を設立。

 

札弦商會 Mandir[マンディル] https://www.sshoukaimandir.com/

元は取り壊し予定だった廃寺を再利用し、地元に根差した“ひがし北海道の補給拠点”として、宿泊、ワーケーション、アウトドアグッズの店頭販売、地元のアウトドアアクティビティ情報基地として運営中。

斜里岳や神の子池、さくらの滝、知床国立公園・阿寒摩周国立公園・網走国定公園などの景勝地や、JR釧網線・女満別空港・中標津空港の中間に位置し、登山、サイクリング、ランニングの他、多彩なアクティビティを楽しむことができる拠点。

北海道斜里郡清里町札弦町14(JR釧網線「札弦駅」より徒歩3分)
✉ : s.shoukai.mandir@gmail.com
☎ : 090-8425-0936